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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第180回】    株式会社野村運送(埼玉県入間市)

メルマガ等で企業認知度アップを図る

 政治の世界では、「オールドメディア」に対してSNSの影響力が強まっている。その結果、従来の「常識」では予測できないような選挙結果がでることが珍しくなくなった。そこで政治家はSNSによる情報発信に力を入れるようになってきた。これはビジネスの世界でも同じである。運送業界では中小事業者でもSNSを活用するようになってきた。このようなインターネットの普及は中小事業者にとってチャンス拡大と認識すべきだろう。昔は企業やサービスをPRするにしても資金力のある大企業が圧倒的に有利だった。手段がテレビやラジオなどの電波媒体、新聞や雑誌などの活字媒体に限られていたからだ。それらの媒体に広告などを出すには金がかかり、資金力のある大手事業者の方が有利だった。だがインターネットはホームページを作るにしてもコストの差はそんなに大きくない。企業規模に拘わらずコスト的には同じ土俵で戦うことができるようになって来たのだ。

 そこで肝心なのは中身になる。内容が優れていれば差別化ができるので、PR面では中小事業者も大手事業者に勝つことが可能だ。だが、もう一つ大事なのはインバウンドマーケティングである。インターネットでは、どんなに良いホームページなどを作っても、外部からアクセスしてもらわなければ無に等しい。制作コストなどの面では企業間に大きな差がなくても、新たにインバウンドマーケティングによる格差が生じる。実はこのインバウンドマーケティングが難しい。どのような効果的なインバウンドマーケティングが良いかはなかなか分からない、というのが現状といって良い。運送業界でも最近はSNSなどで企業イメージの向上に努めたり、リクルートに力を入れるようになった事業者が増えてきた。そのような中で2023年春からメルマガを2週間に1回(必要に応じて号外も)、名刺交換した人などを対象に定期発信している事業者がいる。

 この事業者は野村運送(本社・埼玉県入間市、野村孝博社長)。同社の設立は1959年で、本社営業所の他に宮寺営業所(入間市)、寄居営業所(大里郡寄居町)があり、グループ会社には野村商事(入間市)、玉川業務サービス(比企郡ときがわ町)がある。グループの業務内容は、建材、精密機器、エレベータ部品、自動車部品、食品、雑貨、リネン類などの輸配送。輸送形態としては定期配送やスポット配送がある。また倉庫もあり、一時保管、長期保管、在庫管理、流通加工、仕分け積み替え作業など、荷主の多様なニーズに対応している。従業員数はグループで145人、保有車両数はウィング車、パワーゲート車、ユニック車、トレーラなど150台である。2025年3月期のグループ売上高は約16億円。2022年には、それまで「グループ会社として海コン輸送を行っていた野村海運を完全に分離した」(野村社長)。野村海運の社長が同社の株を買って独立したのである。

 また、以前はコンビニ配送も行っていたがこの間に撤退している。「30万円程度しかドライバーに給料を払うことができないのでコンビニ配送からは撤退した」(野村社長)という。そのような影響もあり、ここ2、3年はグループ売上も微増で推移している。このような中で同社は、2022年ごろから「物流センター業務の開拓などを目的に企業イメージをアップして認知度を高めるためにFAXやDMによる情報発信を始めた」(同)。内容は、保有車両の種類や料金一覧など。また「物流に関する困りごとも聞き出すような内容にした」(同)。だが、このようなアプローチをしても「結果的には、あまり良くなかった」(同)という。そこで専門家のアドバイスなども参考にして、2023年春から開始したのがメールマガジンである。物流に関する困りごとなどを聞きだして仕事に結びつけようというのだ。メルマガは「2週間に1回、名刺を交換した人を対象に発信している」(同)。

 メルマガは企業の認知度の向上が目的だが、これまでの成果はどうか。「仕事の引き合い、問い合わせは幾つかあったが、まだ具体的な仕事にはなっていない」(野村社長)ようだ。一方「ブログは毎日書いている」(同)。同社では社内報も発行しているが「社内報は給料袋に入れて渡すようにしている」(同)。ホームページは主にリクルート的な内容にしている。このようにメルマガは2週間に1度の発信で企業認知度のアップと新規の仕事の引き合いが目的。ブログは社長自身の趣味も含めて毎日発信。ホームページはリクルートが主な狙い。社内報は活字媒体で社員に直接手渡しと、それぞれの主たる目的別に使い分けている。それではリクルート面での効果はどうか。実は、取材した日も幾人かの面接があって、取材後にも面接予定が入っていた。ドライバー募集の主たるツールは大手求人サイトとメルマガで、「解析するとメルマガの方がクリック率が高い」(同)という。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>