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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第176回】    アサヒロジスティクス株式会社(さいたま市大宮区)

業界初の特定技能外国人ドライバー採用と受け入れ体制

 自動車運送業も特定技能1号に追加された。技能実習を修了して特定技能1号になれば最長5年間の就労が認められる。さらに試験に合格して特定技能2号になれば在留期間の制限がなくなる。実質的には日本人ドライバーと同じ条件になるので、トラック運送業界の中からは歓迎の声が出ている。このような中で、自動車運送分野で国内初となる特定技能外国人ドライバーを採用したのがアサヒロジスティクス(本社・さいたま市大宮区、横塚元樹社長)だ。同社が採用したのは中国籍の周鴻澤(26歳)さん。周さんは6年間日本に住んでいて、2年間は日本語学校で日本語を学び、その後、日本の大学で学んだ。周さんは2024年12月に特定技能1号評価試験に合格。今年3月28日に自動車運送業分野における特定技能1号の在留資格の許可を受け、アサヒロジスティクスに4月15日から国内初の特定技能外国人ドライバーとして採用された。

 周さんは福岡に在住していた。そこで初めて特定技能1号の試験を実施した福岡の自動車教習所の経営者から、アサヒロジスティクスの横塚社長が「意見を求められていた」という。また、「合格者をどこの会社に就職させるかでも話があった」(横塚社長)。自動車運送分野の特定技能1号の周さんをモデルケースとして成功させたいという思いから、受け入れ体制の整っている事業者に就職させることが重要と考えていたようだ。その点、アサヒロジスティクスは新人ドライバー教育はもとより、その後の教育体制も整っている。また、周さんは日本に6年間住んでいるので「基本的には日本の人と同じように受入れることができる」(横塚社長)ということから、業界で初めての特定技能1号のドライバー採用が決まったようだ。そこで、アサヒロジスティクスにおける人材に対する基本的な考え方や、ドライバーデビューサポート体制などを見ることにしよう。

 アサヒロジスティクスは1945年の創業。1955年に旭運輸を設立し2001年に現社名に変更した。創業者は、創業当初から運送業の社会的地位の向上に対する強い思いがあったという。2代目社長も社員の待遇改善、休日の増加、労働環境の整備、福利厚生の充実などに取り組んできた。現社長も先代たちの意思を受け継ぎ、「物流業界を憧れの業界にする」を経営理念に掲げている。とりわけ力を入れてきたのは教育で、経験がない人でも安心して働ける教育体制や職場環境の整備に努めている。現在は、グループ社員数が7752人(非正規社員含む)、保有車両数1696台、売上高は単体477億6200万円、連結600億円である(いずれも2025年3月期)。グループ会社にはアサヒフレッシュロジ、アサヒオートサービス、スマイルサービス、川越自動車学校、BPトランスポート、さらに5月にレインボー物流(本社・大阪府高槻市)の全株を取得して子会社化した。

 同社の教育・育成制度が「ダントツのドライバーデビューサポート体制」だ。滑川福田センター、滑川寮研修所、SI制度、川越自動車学校、免許取得支援制度、フォローアップ研修、全車両AT化、クローバープロジェクト、働きやすいユニフォームなどとなっている。2017年に開設したのが総合安全研修施設で、ドライバーとして入社した人は全員が3泊4日のセールスドライバー新人研修を受講し、経験豊富な指導員から実践的な訓練を受ける。最終日の効果測定で合格基準を満たすとSD新人研修修了証が授与される。その後もフォローアップの教育体制ができている。各営業所研修では、セーフティアクションインストラクターが研修センターの指導員と同じレベルの研修をする。さらにアサヒ人財育成大学(ALU)は社内の階層別教育制度である。2022年10月に買収した川越自動車学校は、社内だけではなく協力会社をはじめ同業他社から中型免許取得要請が多い。

 クローバープロジェクトは性別や年齢に関係なく誰もが気持ちよく働ける環境づくりを目指すもの。労働負荷を軽減して誰にでも作業ができるようにする。同社は現在、女性ドライバーの比率が8.2%で、当面の目標は10%を目指している。同プロジェクトの一環が全車両AT化だ。「マニュアル車はAT車よりも付加価値を生み出しているのか。マニュアル車でもAT車でも顧客に提供する価値に違いはない。それならばAT車の方が少しでも労働負荷を軽減できるのではないか」(横塚社長)。そこで計画的に代替えを進めて2024年4月1日からは全車両をAT車にした。今度は特定技能1号の周さんの採用で「性別や年齢に関係なく」だけではなく、「国籍に拘わらず」がプラスされたことになる。「初めての特定技能1号の外国人ドライバーの採用でも、特別な受け入れ態勢ということではなく日本の人と基本的には同じ」(横塚社長)という。成功させていく考えだ。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>

(写真提供:アサヒロジスティクス)