トラック情報サイト「トラックNEXT」

トラックNEXTは、トラックユーザーとトラック関連メーカーをつなぐトラック情報サイトです

運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

バックナンバー一覧はこちら

【第174回】    有限会社サンロジスティックス(茨城県牛久市)

労働時間短縮は「安全第一」の必要条件

 昨年4月1日から今年3月末までの1年間で、年間残業960時間をクリアできただろうか。そのような意味では「2024年問題」の実質的な始まりは今年度からといっても良いだろう。労働時間の短縮には取引先(発荷主・着荷主)との交渉が不可欠だが、荷主によって業務の内容が違う。それぞれの現場の条件が違えば、労働時間を短縮するといっても一律にはいかない。だから労働時間短縮の具体的な方法は荷主によって違うのである。そのようなことから取引先の条件に応じて様々な労働時間短縮を推進してきたのがサンロジスティックス(茨城県牛久市、石渡光江社長)である。同社の設立は2004年4月なので、まだ社歴は21年と比較的若い会社だが、「安全第一」という観点から労働時間短縮などに取り組んできた。「安全第一」は同社の設立にも関わる会社の精神だからである。そこで同社の設立の経緯や現在の事業内容、安全管理などから簡単に見ることにしよう。

 実は、同社の出発点ともいえる運送会社が設立されたのは1973年だった。そして、現在とほぼ同じような運送事業や付帯作業などをおこなっていた。だが、大きな事故を起こしてしまい、その事故に対する深い反省から「安全第一」を掲げて運送を分離して設立されたのがサンロジスティックスである。現在では本社の他に石岡営業所(小美玉市)をもち、保有車両数は94台。内訳はトレーラ、平ボディ車、ユニック車、ウィング車などである。従業員数は90人で、そのうちドライバーは70人。運送事業の他に倉庫業、特別管理産業廃棄物収集運搬などを行っている。輸送貨物は鉄鋼や建築資材などが主で、道路に白線を引く塗料や、路面などに敷設するブロックなども輸送している。安全第一の方針に基づいて毎月第1土曜日に安全衛生委員会を開き、第2土曜日の全員参加の安全会議で周知する。さらに同社では添乗指導や安全パトロールなども実施している。

 そのような中で2012年にはISO39001認証を取得し、「事故件数が以前の4分の1になり、損害保険の割引も最高になるなど目に見える成果があった」(本橋高志専務)という。「安全第一」のためには労働時間短縮は必要条件という位置づけで、「2024年問題」にもいち早く取り組んできた。具体的に労働時間短縮に着手したのは2022年初めからである。中距離輸送でも高速道路を利用するようにしたのは7年ほど前からだが、「2024年問題」を機に、たとえば都内を通過するなど道路が混雑する輸送では近距離でも取引先と交渉して高速を使用するようにした。「近距離輸送でも道路の混雑状況が読めないので、早めに着いて待機しているのが一番の課題だった」(本橋専務)からである。指定時間の関係では道路混雑などで遅れる場合にはクレームなしとし、昨年2月からは出発時間を遅らせて固定化するようにした。70台中の50台では実現できているという。

 同社では「納品方面の見直しも検討してもらった。当社より他の事業者が担当した方が効率的なエリアもある」(本橋専務)からだ。また、時間指定納品の見直しでは、納品時間の指定をなくして午前中とか午後なら夕方までの間といったように、時間的に幅を持たせた緩い指定にしてもらったケースもある。理由は、到着時間に幅をもたせることで、焦って運転することなく事故を防ぐためと、安全運転を強調したのである。あるいは積込み時間が遅い荷主の場合、帰社してから積込みまでの待機時間を短縮するために「前日夜の積込みではなく当日朝の積込みにした荷主もいる」(同)。だが、朝早い時間では荷主の担当者がいないため、セキュリティ強化の対応もしてもらった。防犯カメラの増設、外灯の増設、門の所は機械警備でカードで開閉できるようにしたり、伝票の電子化などだ。また、積込み場では、事前にラック仕分けをしておいてもらうなどである。

 どうしても早朝の納品が必要な着荷主では、オーダーを前倒ししてもらい前日の夕方に納品するようにした。「早朝納品から前日夕方納品にしたので、車両が2回転できるようになった」(本橋専務)という。また、「善意」の着時間指定もあった。「7時半前までに来てくれれば、作業員が荷降ろしを手伝えるという理由だ」(同)。そこで「もし着時間が遅れたら、手伝いがなくてもドライバーが荷降ろしをする。そのためフォークリフトを無料で貸してくれることを条件にした」(同)。あるいは地元の工場と滋賀県にある工場間の横持ち輸送では、従来は両工場とも着時間が9時だった。しかし、積込は15時まで待たなければならなかった。そこで両方とも発時間を4時にして着時間を14時にしたのである。そうすれば、2泊3日運行が1泊2日運行にできる。同社ではこのように安全第一という観点から、それぞれの荷主ごとに条件を検討して労働時間短縮に取り組んできた。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>