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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第121回】    フライスター物流株式会社(神奈川県藤沢市)

3カ年計画で財務体質を強化しつつ労働条件を改善

 首都圏でドライ食品や飲料の共同配送を中心に事業展開をしているフライスター物流(本社・神奈川県藤沢市、伊藤一貴社長)。2023年3月までの3カ年計画を今年4月にスタートして間もない6月に、創業者の富永義男社長が逝去された。7月から新社長に就任したのは営業本部長だった伊藤一貴氏である。伊藤社長は社長就任に関して、「2、3年前から新規開拓や取引先との値上げ交渉などをやってきており、今度は後任の営業本部長を社内から配置した。社長という立場からは、まだ1年間を通した数字が出ていないので分からないが、3カ年計画に沿って経営していきたい。そのための経営基盤は3営業所体制でできている」という。同社の設立は1989年。設立当初は、パン粉の大手メーカーのフライスターの商品を中心に、首都圏の食品問屋などへの配送からスタートした。その後、食品メーカーなどの取引先を開拓して首都圏で共同配送を行っている。

 フライスター物流は本社の他に厚木営業所、東日本野田PDセンター(千葉県野田市)、坂戸営業所(埼玉県坂戸市)がある。坂戸営業所は昨年7月に開設した。また、人材派遣のグループ会社もある。主たる事業はドライ食品や飲料の首都圏エリアにおける共同配送だが、工場からの幹線輸送や、特積み事業者に委託した小ロットの配送もしている。共同配送は厚木営業所、東日本野田PDセンター、坂戸営業所の3カ所から、首都圏エリアの1都3県(東京、神奈川、千葉、埼玉)をカバーする体制だ。納品先は食品問屋がメインで、量販店など大手小売業の物流センターもある。取扱商品はドライ食品と飲料で、ストックでは複数の荷主の商品をセンターに一時在庫し、オーダーに基づいてピッキング、仕分け、検品、共同配送をしている。また、食品や飲料メーカーから夕方に同社センターに納入され、スルーで共同配送のコースに積合せているものもある。

 従業員数は85人(約10人の非正規社員を含む)で、うちドライバーは40人。保有車両数は42台で、大型車(13t車)18台、7t車14台、4t車5台、3t車2台、2t車1台、その他に軽自動車1台とライトバン1台という内訳だ。自車両の他に小口貨物は特積み事業者に委託し、共同配送の一部地域やチャーター便の一部も協力会社に委託している。倉庫の延床面積は1万5840㎡。2020年3月期の売上高は「約14億円で、当初の11億5700万円の計画を大幅に上回った」(湯原一成常務)。これは「飲料関係の取引先の売上が急増している」(同)ことによる。主たる取引先は約15社で、創業当初からの取引先であるフライスターの現在の売上構成は約30%。それに代わり3年ぐらい前から飲料関係の取引先の売上が急増してきた。コロナの影響で「マイナスの荷主もあるが、そのマイナスを飲料関係の荷主の取引増がカバー」(伊藤社長)している。

 同社は安全管理に力を入れ、安全性優良事業所(Gマーク)の認定取得などにも取り組んできた。だが、そのためにはコンプライアンス・コストの原資の確保が不可欠だ。その取組みの一つが契約内容の見直しである。契約内容の見直しを始めたのは今から4、5年前になる。「トータルでいくらという契約だったが収支を分析したら利益が出ていない」(伊藤社長)。そこで作業ごとに分けてコストを算出して契約する方式にした。共同配送の契約をケース単位とし、保管料、荷役料、配送料、横持ち料、パレット料など、それぞれに料金を決めて契約するというもの。基本的には「標準貨物自動車運送約款」の考え方と同じだが、標準貨物自動車運送約款が施行になったのは2017年11月なので、同社はそれに先行していた。当時、営業本部長として交渉の前線にいた伊藤社長は、「契約内容変更の話しを荷主に持っていくのは大変だったが、資料を提示しながら交渉した」という。

 坂戸営業所の開設は配送の効率化や労働条件の改善、収益性の向上を目的としたものである。従来は厚木と野田の2拠点から、東京23区はエリアを分担して配送。三多摩地区は厚木からカバーしていた。だが、千葉県や埼玉県の遠い地域は労働時間の問題もあって協力会社に委託していた。坂戸営業所の開設で東京23区の担当エリアを一部再編成し、埼玉県の遠方も自車両でカバーするようにした。3カ年計画では、働き方改革や収益性の向上を視野に、「売上よりも財務体質の強化に重点をおき最終年度の2023年3月期では売上高16億4500万円、経常利益9000万円を計画している」(湯原常務)。目標達成のために「野田を拠点として東京に近い千葉県中心部、坂戸を拠点に埼玉県で、いずれも在庫管理の伴う共配の荷物に重点をおいて開拓していく」(伊藤社長)。また「3カ年計画では退職金制度の検討など福利厚生の充実に取り組んでいく」(湯原常務)予定だ。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>

(写真:フライスター物流提供)