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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第116回】   横浜低温流通株式会社(神奈川県厚木市)

感染予防にNaClOで靴底消毒や本社機能の分散化も

 新型コロナウイルス感染症予防には各社が努力している。外部との接触があるドライバーはもちろん、物流センター内ではパート従業員など社員同士の接触の機会も多い。これら現場での感染防止対策は重要だが、本社の事務部門でも機能を分散して机の間隔をあけるなどの対応を速やかにとったのが横浜低温流通(本社・神奈川県厚木市、伊澤進社長)。同社は主に冷蔵・冷凍食品を取り扱っている。配送センターは神奈川、埼玉、愛知、岐阜県と大阪府に12カ所。営業所も神奈川、埼玉、静岡、千葉、愛知、岐阜県と大阪府に10営業所ある。その他にコールセンター(厚木市)、システム事務所(横浜市)があり、関連会社は横浜低温ロジスティクス、名古屋低温物流、COLA-VOの3社。管理車両台数は首都圏が250台、中京圏が150台、京阪神圏が80台で、そのうち195台が自車両である。従業員数は525人で正社員が460人、短時間従業員が65人である。

 横浜低温流通が新型コロナウイルス感染防止の総合的な対策に着手したのは3月早々と緊急事態宣言が発出されるよりも約1カ月ほど前だった。これまでも同社では「お客さまと従業員の安全確保を最優先してきた」(伊澤進社長)ので、対策に要する費用など「従業員の命と健康にはかえられない」(同)と躊躇することなく決断したという。東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、福岡県の7都府県を対象に緊急事態宣言が発出されたのは4月7日だが、同社は4月15日にはホームページに「新型コロナウイルスに対する当社対応について」をUPしている。その中では、取引先など顧客先への訪問や外出を制限し、同社に来社する訪問客も制限させていただく、としている。同時に、食品を取り扱っているので感染予防に努めながら通常通りの業務継続に努力するが、輸配送の遅延などの不測の事態が発生する可能性への理解も求めている。

 さらに新型コロナウイルス感染予防として以下のような対策を掲げている。①本社機能の分離、②社内備蓄マスクの従業員への配布、③入荷受付でのアルコール消毒、手洗い、換気、清掃の徹底、④全部門での全従業員の体調管理と本部への毎日の報告、体調不良者の出社停止の徹底、⑤全社員に対する不要不急の外出、3密の伴う場所への出入り禁止の徹底、などである。運行・センターで実施中の対策の1つが靴底からの施設内へのウイルス持込防止策の実施で、入室時に次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)で靴底を消毒してから入室するもの。そのため次亜塩素酸水を製造する装置をレンタルで導入した。この製造装置は溶液を入れた製造装置に水道の蛇口をつなげるだけで良い。濃縮の次亜塩素酸を水道水で薄めて次亜塩素酸水にし、ペットボトルの容器に詰めるだけである。「製造装置のレンタル料は月1万円程度で、溶液が6パックで2万円ほど」(伊澤文孝専務)という。

 運行管理営業所などで点呼を受ける前には、入室時に次亜塩素酸水で靴底を消毒し、受付や各フロアに設置したアルコール消毒液で手指先などを消毒。体調管理では、運行管理者が点呼時に毎回チャックする。体温チェックは全社の運行管理営業所で実施しているが、チェックにはセーフティディスタンスのためにデスク2個分の距離を確保している。検温、体調と併せて同居家族などの体調もヒアリングする。同様にロジスティクスセンターなどでも、フォークリフトオペレーターなど庫内作業員の体温チェック、その他を実施している。運行管理営業所やロジスティクスセンターなどでチェックしたこれら体調の記録やヒアリング結果などは対策本部に報告。対策本部では全従業員の体調などを一元管理するような体制をとっている。次亜塩素酸水は各車両にも配備しており、運転前と終了後にはドアノブ、ハンドルなど車内の消毒を実施している。

 同社では本社の事務部門でも機能を分離・分散して感染予防に努めている。本社の場合は1フロア約330㎡で、従来は本社スタッフの約30人が3階の全フロアと2階の一部で業務を行っていた。2階の残りのスペースは倉庫として使えるように仕切って冷凍機が設置されていたが、実質的には空きスペースで何にも使っていなかった。そこで2階の全部を事務所に改造。本社スタッフを分離して万が一、感染者が出た場合でも全員に感染が拡大する可能性をなくすようにした。本社には経理、総務、業務などの部署があるが「セクションごとに分離してしまうと、もし感染者が出た場合にその部門の業務に支障が出る」(伊澤専務)。そこで各部門とも2班に分けて2カ所ずつに分離した。机の配置もセーフティディスタンスを保って間隔を開け、さらにビニールや発泡スチロールなどで囲ったりした。同様に各地の物流センターも事務部門を離れた部屋に分けて感染防止に努めている。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>

(写真提供:横浜低温流通)