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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第113回】   株式会社トランシア(埼玉県幸手市)

ホームページの工夫で昨秋から応募者が急増し増車を加速

 多くの事業者ではドライバー不足が深刻で、中には現有の車両の稼働にも支障をきたしている事業者もある。だが、そのよう中で積極的に増車を進めているのがトランシア(埼玉県幸手市、小堀一馬社長)だ。「今年は2月から10月にかけて積極的に増車していく。すでに13tウィング車を9台、4t車も2台発注してある」(小堀社長)という。同社は約2年半前の2018年秋には、2t車から7t車まで保有車両数が29台だった。だが、この間に大型車なども増車し、現在は40台にまで増えている。このような中で、さらに今年10月までほぼ月に1台のペースで増車していく予定だ。いうまでもなく、このような短期間での増車には、それに見合うドライバーの確保が不可欠である。現在のドライバーは40人で、男性が37人、女性が3人だが、さらにドライバーを確保できるという確信がなければ、車両を遊ばせるだけになってしまうので、とても増車などできない。

 トランシアは小堀社長の父親が2000年にさくら興運として設立した。そして2t車や3t車で酒類の配送をするようになったのである。小堀社長が入社したのは16年前で、当時はユニック車がほとんどだったという。その後、「仕事を覚えるために同業者に半年ほど出向。そこで家電配送などの仕事を学んだ」(小堀社長)。そのようなことから家具や家電の2マン配送をメインにするようになった。さらに木材や建築資材の現場納品などの業務も行っている。家具や家電の配送では、配送するだけではなく搬入、設置、組立、撤去などの作業もできるというのが同社の強みだ。社長に就任したのは2017年1月で、同時に社名も現在のトランシアに変更している。トランシアは運送(トランスポート)と幸せ(シアワセ)の造語で、「幸せを運ぶ企業、運送を通して幸せになる企業といった意味合いで命名した」(同)のだという。

 業務内容は、一般貨物運送事業、家電家具の配送や設置、電気工事(配電工事や家庭用エアコン取付)、産業廃棄物収集運搬などである。ウィング車はフリーで仕事を請け、ユニック車では木材やプレカットなどの建築資材、メガソーラの現場納品などを主におこなっている。箱車では家具や家電の配送をしている。家具や家電の配送はほぼ2マンで行っていて、エアコンの取り付けなど電気工事も行う。家電製品は複数の量販店の配送の仕事だが、取引先によって朝積みと夕積みと違うため共同配送はやっていない。配送エリアは、埼玉県内の自社に近いエリア、野田市など千葉県の一部、五霞町など茨城県の一部である。2マン配送は土日などの納品が多くなるので、平日の仕事開拓が大きな課題だし季節波動もある。一方、木材や建築資材は、古河市(茨城県)や熊谷市などの工場から出荷される。プレカットなどはほとんどが県内納品で、その他には東京や神奈川の現場への納品もある。

 このような中で新しい仕事を積極的に取り入れ「仕事の幅を拡大していきたい」(小堀社長)と考えていた。同時に「50代、60代になっても、年齢に応じた仕事ができるようにしていきたい」(同)。そのためには新しい分野の仕事を開拓して業務の幅を広げるようにしないといけない。そこでこの間、建材関係の取引先を増やしてきた。同時に、13tウィング車も増やしてきたのである。「13tウィング車は納車までに1年かかる。そこで先に車を入れてしまうようにしている。大きな車の方が売上も大きいし、ウィング車なら汎用性が高い」(同)からである。一方、「2マン配送の仕事は若くないとできない。家具は年齢が高くなってもできるが、家電は家具のようにバラすことができないので、重量のある製品を2人で運ばないといけないから」(同)である。このようなことから一般貨物にシフトするために、一般貨物用のトラックを増車しているのだという。

 同社で月1台ぐらいのペースで増車を続けているので、ドライバーを増やさなければならない。そのため「昨年1年をかけてホームページの工夫をしてきた。その結果、昨年秋ごろから応募者が増えてきた。応募者は20代、30代が多く毎月7、8人は面接している」(小堀社長)。その手ごたえから増車を進めているのである。同社も以前はなかなか応募者が来なかった。そこで小堀社長は、採用などで実績を上げている各地の事業者を訪ねてヒントを得ると同時に、様ざまな創意工夫を重ねてホームページを変えてきた。詳細は省くがポイントは①求人媒体に頼らない、②スマホからのアクセスを容易にするである。同社の2019年8月期決算では売上が3億5000万円だった。車両とドライバーを増やして、2023年8月期には保有車両数を70台にして売上高8億5000万円を目指している。本社社屋も年内に竣工を予定しており、さらに倉庫業への参入も計画している。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>