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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第105回】 株式会社マキタ運輸(宮崎県都城市)

混載荷物でシャーシを効率的に稼働する独自の経営を展開

 農産物などの1次産品と加工食品の中間製品の積合せをベースカーゴに、トレーラによる長距離幹線輸送で独自の事業展開をしている事業者がいる。この事業者はマキタ運輸(本社・宮崎県都城市、牧田信良社長)だ。同社は都城市の本社の他に、鹿児島営業所、福岡営業所、大阪営業所、東京営業所(神奈川県川崎市)がある。地元発の荷物は農産物や加工食品(中間製品)を主にしているが、地方からの1次産品輸送では運賃水準とリードタイム、それにドライバーの労働時間といった問題を抱えている。同社ではこのような課題に対し、志布志~大阪航路、宮崎~神戸航路、新門司~大阪航路などのフェリーを利用した無人航送で労働時間の短縮を進めている。また福岡、大阪、東京の営業所を2次配送と帰り荷の確保・集荷の拠点として位置づけ、混載輸送と、シャーシのオペレーション効率を高めることで収益性向上を図るといった、独自のビジネスモデルを展開している。

 マキタ運輸の創業は1981年で、都城市において貨物軽自動車運送からのスタートだった。その後の経緯はやや複雑なので割愛するが、現在は本社、東京(川崎市)、大阪、福岡、鹿児島の各営業所と、マキタ共配センター(都城市)があり、関連会社としてマキタエキスプレス(都城市)、太陽ファームがある。事業内容は一般貨物自動車運送事業、一般倉庫業、冷蔵倉庫業その他である。また、関連会社のマキタエキスプレスは10t車中心の運送事業で、太陽ファームは農業生産法人で施設野菜や露地野菜の生産をしているほか、カット野菜の製造販売などもしている。従業員数は180人。保有車両数はシャーシが150台、トレーラと単車が140台。一般倉庫の床面積は3100㎡、冷蔵倉庫が1250㎡である。売上高は約60億円で、事業所別の売上は本社が約27億円、福岡が約4.5億円、大阪が約16億円、東京が約12億円という割合になっている。

 地元からの主な輸送品目は農産物と加工食品の中間製品で、農産物が1に対して加工食品(中間製品)が2といった割合になっている。輸送先は関西、中部、関東である。一方、帰り荷は輸入肉などが主で福岡着が多い。昔は協力会社への委託比率が高く、車両も単車(有人車)が主だった。だが、その後は自車両でトレーラの比率を徐じょに高めてきた。シャーシは1軸、2軸、3軸を揃えて輸送条件によって使い分けるようにしている。また、トレーラ化と同時に、フェリーによる無人航送の割合も高めてきた。JR貨物では枠の確保が難しいからだった。当初、フェリーは志布志航路と宮崎航路だった。本社所在地の都城からは、志布志港も宮崎港もほぼ等距離にあり、両港からは毎日フェリーに乗船している。その後、新門司航路も利用するようにした。「シャーシとヘッドの回転率向上のために、あえて毎日2、3台は新門司から乗せている」(牧田社長)という。

 トレーラ輸送で重要なのはシャーシの効率的稼働である。シャーシを無駄なくラウンドで運行することが利益の源泉だ。またドライバーの労働時間短縮も重要な課題だが、それらの「ヘソ」になっているのが上りの荷物では大阪営業所で、下りの荷物では福岡営業所である。各営業所は営業活動と、幹線輸送してきた荷物をさらにエリア配送する2次輸送の拠点である。中でも大阪営業所は上りの荷物の「ヘソ」で、中部地区や関東地区への荷物の多くは、大阪営業所のヘッドでけん引していく仕組みにしている。上りは関西まではフェリーで無人航送し(10%程度は有人車もある)、大阪のヘッドとドライバーで中部や関東に運ぶというパターンを基本にしているのだ。一方、帰り荷の多くは福岡営業所に運んでくる。福岡営業所の近くには冷凍倉庫などが多いからだ。さらに、これらの倉庫から宮崎や鹿児島などに配送される荷物を積んで帰ることでシャーシの実車率を高めている。

 トレーラ化のもう1つの目的は繁閑差の調整だ。「宮崎県の農産物のピークは12月から翌年の6月10日前後と、他の地方とは逆になっている。夏場でもゴボウやジャガイモなどが収穫されるが、最近は消費量が減少傾向にある」(牧田社長)。このように農産物には繁閑の差があるので、「今はシャーシを止めることで波動に対応するようにしている」(同)という。現在は「自車両が60%、庸車が40%の割合で、港でのドレージ料金も庸車とすると、自車両50%、庸車50%になる」(同)。同社ではフェリー代が月約6000万円、高速料金が月約1200万円の支払いとなっている。それでも適正な収益性を確保している1番の理由は混載輸送である。車建て契約の仕事はできるだけ避けている。運賃も「重量建てや個建て契約が多く、プラス・エリア運賃」(同)で、混載差益を確保して協力会社にも地元農協のチャーター料金を上回る庸車運賃を支払うようにしているという。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>