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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第104回】 株式会社ボルテックスセイグン(群馬県安中市)

安全第一の点呼重視は必然的に健康経営に至る

 健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定を取得する事業者が増えてきた。ボルテックスセイグン(本社・群馬県安中市、武井宏社長)もその1社だが、同社の場合には他社とは経緯が少し異なっている。同社では安全第一を掲げて、ずっと以前から点呼を重視する取り組みを実施してきた。点呼重視と不可分の関係として健康管理や福利厚生の充実を進めてきたのである。その結果、健康管理面でもすでに高い水準に達していた。健康経営優良法人の認定取得は必然的な結果であり、「後付け」的な位置づけともいえる。安全第一、人間第一を掲げるようになったのは、過去に苦い経験があったからだ。ずっと昔には「脳疾患や心臓疾患などで亡くなった社員もいた」(武井社長)。そこで「だいぶ以前からAEDを導入し、そのため1人の命が助かったこともあった」(同)という。そのような経験も踏まえて、「安全第一には人の管理が基本で、まず健康チェック」(同)に至った。

 ボルテッククスセイグンは1951年の設立で、現在は本社(総務部・人事部・経理財務部・情報システム部)の他に本社物流センター(営業部・運輸部・国際貨物グループ・倉庫グループ・包装グループ)、人見物流センター(安中市=人見物流センター・中野谷危険物倉庫・人見平屋倉庫)、横野平物流センター(同)、鷺宮物流センター(同)、上越物流センター(新潟県上越市=上越物流センター・福橋倉庫)、千葉営業所(千葉県市原市)、白河営業所(福島県白河市=白河営業所・西郷村=白河事業所・郡山市=郡山出張所)、長野営業所(長野県千曲市)がある。取り扱い品目は化学品、危険物、一般消費財その他で、従業員数は415人、保有車両数が299台。さらに関連会社には、ボルテックスセイワ、ボルテックスアーク、アークタクシー、ボルテックスピース、ボルテックスサイエンス、ヒューマンサポートがある。

 同社では安全第一、人間第一の方針に基づいて、1992年11月には従業員の休憩や仮眠のための「健心荘」を完成。また、健心荘に隣接して2015年1月には事業所内託児所「うずまき保育園」も開設している。従業員の健康管理面では、2012年10月に健心荘内の1室に健康管理室を開設し、社内保健師を配置するようにした。そのような取り組みの中で、2014年には遠隔健康指導システムを導入し、上越、白河、千葉の各営業所に端末をおいて、保健師がPC画面で面談、健康指導できるようにした。また、安全第一を徹底する一環としては、2016年9月に「運転者点呼システム」で特許を取得した(特許第6007161号)。このIT点呼システムは血圧や体温などの健康管理システムをリンクさせたもの。なお、このIT点呼システムは2017年度から国土交通省の過労運転防止機器に選定され、他の中小事業者にも導入が容易になっている。

 保健師は産業カウンセラーの資格も取得していて週4日の勤務。同社は2017年からは協会けんぽ(全国健康保険協会)で義務づけられた特定保健指導をけんぽから委託されて自社で行えるようになった。組合けんぽから特定保健指導を委託されたのは、他業種の企業も含めて県内で初めてのケースのようだ。健康管理室では、定期健康診断の結果に基づいて健康状態を把握し、再検査の必要な人には再検査を知らせて促す。また、産業医と連携しながら健康相談、アドバイス、保険指導、さらに社内で独自に規定した長時間労働に該当する人への面談、復職面談などを行っている。これらの取り組みで力を発揮しているのが、2014年に導入した遠隔健康指導システムだ。同システムでは、健康管理室で定期健康診断のデータを一元管理することはもちろん、端末を置いている事業所では、PC画面を通して健康管理室と事業所所属の社員が面談し保健指導をすることができる。

 またIT点呼から情報を取り込んで健康経営を実現するために開発したのが、血圧・体温計測機能つきIT点呼システムである。システムの概要は、①血圧データを取り込み、運行前に過去1週間の平均値と比較する。本人の1週間の変化グラフを表示して、急な変化がみられる場合には運行管理者に伝達する。そして1)適正か、2)指導する必要があるか、3)乗務を停止すべきかを判断。②インフルエンザ対策として、体温も運行前後に測って点呼ごとに蓄積しておく。③静脈認証と大型タッチパネルで簡単操作を実現した。④点呼記録を自動で点呼簿に反映できるようにして、点呼簿を手書きしなくても良くした(付帯作業の軽減でもある)。そして、これらの血圧、体温データを活用して、保健師による個別健康指導を実施するようにした。その結果、システム導入効果としては、社員の健康管理に対する自覚が高まり、再検査受診率は100%になっている。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>