運送事業者レポート
TOP運送事業者レポートtop>2017年10月

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第84回】 月寒運輸株式会社(北海道札幌市)

3年計画で休暇取得など制度利用促進


 働き方改革の取り組みの一環として、今年度から3年計画で産休や育休、介護休業などの制度利用促進を一般事業主行動計画に掲げたのが月寒運輸(本社・北海道札幌市、古屋茂社長)。同社は1958年の設立で、本社の他に函館支店、大曲配送センター、川北配送センター、北見営業所がある。従業員数は165人(パートなどを含む)で、保有車両数は2t車、4t車、8t車、11t車、25t車、トレーラなど157台。売上高は約27億円である。社内は大型部門、トレーラ部門、倉庫部門、道内区域部門、函館支店に分かれている。北海道の事業者の場合には道内主要都市間を結ぶ幹線輸送において、ドライバーの長時間労働をどのように短縮するかが大きな課題となっている。その点について同社では、「ドライバーの労働時間短縮では道内幹線輸送の翌日は近場の輸配送をするなど、各部門の中で調整している」(奈良幹男取締役相談役:北海道トラック協会会長)。

 月寒運輸の売上げの約60%を占めるのが食品で、大口取引先は地元の食品メーカーと大手製パン会社の2社。地元の食品メーカーは、コロッケをはじめ春巻きやグラタン、シューマイなどの冷凍食品を製造しており、なかでもコロッケは羊蹄山の山麓で収穫される男爵イモを原料としている。メーカーでは羊蹄山の麓の農協と契約してジャガイモを買い付けているが、月寒運輸では原料のジャガイモの集荷・輸送はしていない。札幌工場、恵庭工場、津別工場(網走郡)、浦幌工場(十勝郡)から出荷される製品物流である。本州向けの幹線輸送では、本州専用のトレーラや増トン車があり、当然だがフェリーを利用する。荷主の東京支店、名古屋支店、大阪支店、福岡支店のうち、月寒運輸は福岡支店管轄を除くエリアへの幹線輸送を担当している。フェリー航送では、東京向けでは苫小牧〜大洗航路のフェリー、大阪、名古屋向けは小樽〜舞鶴航路のフェリーが基本だ。


 この食品メーカーとの関連では、パン粉その他の原材料の輸送なども月寒運輸では行っている。月寒運輸の売上げのもう1つの柱は製パン会社の仕事である。そもそもの取引のキッカケは、古くから地元の製菓会社の仕事をしていたことによる。その製菓会社を大手製パン会社が買収したので、そのまま道内主要都市への幹線輸送を受託することになった。ところが珍しいのは幹線輸送だけではなく、エリアによっては月寒運輸が小売店へのパンの配送業務も行っていることだ。まず、函館地区の配送業務の受託から始まり、その約半年後には、北見地区の配送業務も月寒運輸が行うことになった。それに合わせて月寒運輸では北見営業所を開設している。自車両で社員ドライバーによる配送を基本にしている荷主にとっては珍しいケースといえる。おそらく配送効率などから月寒運輸にアウトソーシングした方がメリットがあるという判断なのだろうと思われる。

 その他にも食品関係の仕事では、東京に本社のある食品メーカーの札幌営業所の配送業務も行っている。また、北海道の地場の大手コンビニの配送も台数は少ないが受託している。大曲センターの1階は大手物流事業者の荷物が入っていて、2階は関西が本社の包装・容器メーカーの製品の在庫管理と全道へのデリバリーを担っている。川北配送センターでは建設資材を預かっていて配送先は主に建設現場だ。その他、同社では「各荷主に2、3台ずつ車両を出しており取引先は200社ぐらいある。その方が運賃交渉もしやすい」(奈良相談役)という。運賃も徐じょに上向いているという。また、フェリー料金の「燃料調整金を転嫁できるようになったのは大きい」(同)。というのも同社が利用しているフェリー会社は新日本フェリー、商船三井フェリー、川崎近海汽船、太平洋フェリーで、これら4社へのフェリー料金の支払いは月2500万円にもなるからだ。


 だが「ドライバーはフェリーの方が楽で、むしろ札幌から釧路など道内幹線輸送の方が疲れるし、労働時間問題も深刻」(奈良相談役)という。道内における拠点間輸送は労働時間の調整が大きな課題である。「道内幹線輸送のドライバーはシフト勤務にして、拠点間輸送の翌日は近場の仕事をするようにして労働時間を調整している」(奈良相談役)。さらに社員全員がより働きやすい環境をつくり、すべての社員がそれぞれの能力を十分に発揮できるようにするため、@産前産後休業や育児休業、育児休業給付、育休中の社会保険料免除、介護休業などの制度利用の促進を図る、A部門ごとの年次有給休暇取得平均日数の底上げを図る、という行動計画を打ち出したのである。この3年計画に基づいて、今年6月からは年次有給休暇の取得状況についての実態把握を進め、7月からは有給休暇取得予定表の活用を促進して部門ごとの取得平均日数を10〜15%増やす取り組みを進めている。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>