運送事業者レポート
TOP運送事業者レポートtop>2017年6月

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

バックナンバー一覧はこちら

【第80回】 株式会社石橋梱包運輸(千葉県山武郡)

毎年20台ずつ3年余で全車両にAED導入


 最近はトラックにAED(自動体外式除細動器)を搭載するようになった事業者も少しずつ出始めた。だが、保有している全車両に搭載している事業者は、筆者の知る範囲ではいない。そのような中で毎年20台ずつAEDを導入し、3年余で保有台数70台の全車両に装備する方針を打ち出したのが石橋梱包運輸(本社・千葉県山武郡芝山町、石橋正好社長)である。同社は「積んで喜び・走って喜び・納品して喜んでもらう」(石橋社長)をモットーに、荷主との直接取引しかしない、という経営方針を貫いて事業展開している。また同社は安全や品質向上に力を入れている。毎年6月の第2土曜日には、実践的な安全運転技能の向上を促進し、安全運転の重要性を再認識することを目的に安全運転講習会を開く。講習会には外部にも出席を要請し、荷主企業の担当者、運輸支局、労働基準監督署、地元警察署、トラック協会の関係者など、社外からも参加して開催する。

 石橋社長が創業したのは1971年、一般貨物自動車運送事業の免許(当時)を取得したのが1985年である。現在は本社の他に芝山梱包工場、第1成田物流センター、第2成田物流センター、山武物流センターの他、自動車整備工場や自家給油所もある。従業員数は85名で、保有車両数は70台(大型低床ウィング車、大型高床ウィング車、4t増トン車、4t超ロング車、4tウィング車、2tバン車、2tウィング車、2t平ボディ車)である。年商は8億1100万円(2017年6月期)の見通し。事業内容は運送事業が売上の90%を占め、梱包事業と倉庫事業がそれぞれ5%ずつとなっている。産業廃棄物収集運搬も千葉県、千葉市、船橋市、東京都、神奈川県、川崎市、相模原市、埼玉県で許可を取得しているが、これはたまに梱包を解いて梱包資材を持ち帰るようなことがあるためで、スポット的な需要に応じる程度である。また、別会社で保険事業も行っている。


 主要な輸送品目は医療用・介護用寝具関係、システムキッチンなど水回り製品、化成品(原材料と食品容器などの製品)、床暖房などの建材、その他にも工業製品関係の取り扱いが多い。なかには飛行機の脚などの特殊な荷物を運んだりするという。輸送範囲は関東が主である。時には中部や大阪まで運ぶようなこともあるが、長距離輸送は少ない。北の方面への輸送は基本的に傭車にしているが、山形への自社便は多いようだ。しかし、全体的にドライバーの長時間労働などの問題はないという。梱包、倉庫関係では、輸出梱包、減圧梱包、燻蒸梱包その他、様ざまな梱包をしている。梱包事業では、成田空港に近いため輸出関連のスポットの仕事が多い。時には付加価値の高いスポットの梱包作業が入ることもあるという。そのような事業展開の中で、2012年に運送品質課を新設し、安全や品質向上に本格的に、計画的、体系的に取り組むようになったのである。

 また、安全衛生委員も配置し、運行管理システム、さらにレクリエーションなども行っている。安全衛生委員を中心に4月初めから翌年3月末までの年度を通した「保安活動計画」を策定。そのスケジュールに基づいて社内外の安全パトロール、保安、安全・衛生、防災などを実施していく。たとえば社内安全パトロールでは、計画的な抜き打ち点検を実施。具体的には、駐車中の車両の観音扉の施錠状況をチェック、選抜車両の荷台の車両点検、選抜車両のキャビン内点検、梱包工場と倉庫におけるドライバーの作業服の清潔度・保護具の着状況チェック、といったように各月によって内容が違う。また、社外安全パトロールでは、毎月、荷主の○○工場とか△△センターなどを設定し、それぞれの発荷主の現場に出向いて実態を巡視するとともに、ドライバーからの意見も聞く。このドライバーからの要望などは安全衛生委員を通して荷主に改善を要請することもある。


 同社の「保安活動計画」表には、「防災」の項に「緊急呼出し訓練」や「防災設備点検(放水訓練)」、「消火器・操作訓練」といった小項目があり、消火器・操作訓練も年2回実施している。同社は約10年前に消火器を全車両に装備した。「化成品なども運んでいるので、それ以外の車両も合わせて全車両に消火器を積むことにした」(石橋社長)のである。最初は一斉に装備したが、その後は「新車を導入するたびに消火器は標準装備にしている」(吉田寿男本部長)。この消火器と消火訓練が実際に役立ち、荷主の工場で早期に鎮火できたこともあるとう。このような中でAEDの導入を決め、ドライバー全員が普通救命講習を受講している。このAEDの講習を今後は半年に1回開催し、全員が普通救命講習修了書を持つようにしていく。だが、AEDは1台30万円ぐらいするので、今年4月に20台を導入。毎年600万円の予算で70台の全車両には3年余をかけて導入するという計画である。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>