運送事業者レポート
TOP運送事業者レポートtop>2014年10月

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第48回】 株式会社ロジックスライン(千葉県成田市)

「安全運転の見本づくり」を目指す



 トラック運送業界では事業用トラックによる死亡事故抑止に向けて、緊急特別安全キャンペーンを展開中だ。今回の緊急特別安全対策では、死亡事故件数を減らすため事業用トラックを第一当事者とする死亡事故件数を車両台数1万台当たり2.0件以下を共通目標とした。また、全ドライバーには啓発カード(約100万枚)を配布するなど、業界を挙げて事故撲滅に取り組んでいる。

 このようななかで「安全運転の見本づり」を目指そうと、様ざまな取り組みをしている事業者がいる。この事業者はロジックスライン(本社・千葉県成田市、沢田秀明社長)。同社の設立は1998年7月で、現在では、本社の他に空港営業所があり、2t車から13t車まで28台を保有して航空貨物、海上貨物、一般チャーター便や小口混載便、引越サービスなどを行っている。成田空港内では、荷物のダメージチェックやトラックへの積み込み作業などのハンドリングも行っている。

 会社を設立した経緯は割愛するが、事業許可を取得して営業を開始したものの直接取引の荷主はいない。それでも「前に勤めていた会社の取引先へのアプローチはしなかった」(同社長)という。知り合いの運送会社の下請け仕事からのスタートである。そのようななかで空港内にも顔見知りがいたこともあり、「成田空港が近いので空港に着いた荷物などの開拓」をしてきた。

 だが正直に記すと、設立当初は「事故を起こすなよ、とは言っていたものの改善基準告示などあまり気にしていなかった」(沢田社長)時期があったのも事実だ。雇用面でも社会保険に入っていなかった。だが、国民健康保険や国民年金では、将来を不安に思う従業員が辞めていく。「ドライバーの入れ替わりが多かった。雇用の安定が図れなかった」(同社長)という。しかし、労働基準監督署の指導に続き運輸支局の監査を受けたことを「厳しく受け止め」(同社長)、それを機に安全優先の経営に転換した。


 労働基準監督署から2度目の監査があった前年の2005年に、同社ではすでにデジタコを導入していた。それ以前から2t車、4t車を含めてアナログ式の運行記録計を導入し、社内で最高走行速度も設定していた。事故の大きな要因はスピードだからである。しかし、アナログ式の運行記録計では燃費の管理まではできず、ジレンマがあったという。また、GPSを導入したのはかなり早い時点だった。

 しかし当時のシステムはGPSで位置情報は把握できるが、1台ずつしか分からなった。このようなことからデジタコで動態管理もしたかった、という。しかし、デジタコを嫌うドライバーもいて、導入に際して辞めたドライバーも何人かいる。同社ではコンプライアンス重視の経営に転嫁し、2008年には安全性優良事業所(Gマーク)の認定を、翌2009年にはグリーン経営の認証も取得した。これらは「最低限必要なもの」(同社長)と思ったからである。



 だが、労働時間の短縮は難問である。そこで同社では、監督署や支局に「運転日報を持参して直接、指導、アドバイスを受けに行った」(同社長)。また、社内では「ドライバーに改善基準などを説明し、法令順守の重要性を説明した」(同社長)。しかし、それは賃金に直結するのでドライバーにとっては大きな問題だ。そこで「会社としてのスタンスを説明し、賃金に関わることなので生活できないという人は自分で考えて判断してもらう」(同社長)ことにした。

 Gマーク取得に際しては、多くの従業員に納得してもらったが、一部のドライバーは辞めていった。「退職した人はGマークのない会社に行った」(同社長)ようだ。Gマークの認定を受けた翌年にドライブレコーダーも導入した。「デジタコだけで事故が減るのか。ドライバーの技術的な面や運転のクセなどデジタコだけでは読み取れないものもある」(同社長)からだ。実際に両方を導入してから、以前よりも事故が減っている。


 点呼も昨年4月から昼間はIT点呼、18時30分〜7時は夜間点呼者が常駐する体制にした。また今年3月に斬新なデザインの車両を一部に導入した。看板を背負って走行することで、安全運転やマナーの向上を図るためである。5月から始めたのが東ト協のグリーンエコプロジェクトの管理手法の導入。千ト協のセミナーで東ト協の取り組みを知り、早速、その管理手法を自社で採り入れたのである。今後の状況をみて正式参加も視野に入れている。

 さらに6月からは全員にスマートフォンを持たせた。この目的は、ドラレコのヒヤリハット・データをパソコンに落とし込んでスマフォに配信して注意を喚起する狙いである。9月27日には「飲酒運転撲滅講演会」を開いた。社員、荷主、関係者を対象に同社が主催して開く講演会で、今年は1999年11月28日に東名高速道路で飲酒運転のトラックに追突されて2人の子供を亡くした井上保孝、郁美ご夫妻を講師に招いている。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>