運送事業者レポート
TOP運送事業者レポートtop>2013年12月

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第38回】 ハナワ物流株式会社(茨城県下妻市)

地道な地域貢献も企業の社会的役割


 中小事業者も地元の地域社会との共生は重要な課題である。とくに地方都市などでは地域への貢献も重要である。先日、地元の小学校の生徒たちが「感謝をする会」を開き、「社長さんありがとう」とお礼をされた事業者がいる。

 この事業者はハナワ物流(本社・茨城県下妻市、塙正明社長)。同社の企業理念は「信頼」「社会奉仕」だが、市内の公立小中学校に対する現金の寄贈などを通して、自社で可能な範囲の社会奉仕をしてきた結果である。同社は1954年4月の設立で、現在では一般貨物自動車運送の他、取扱事業、倉庫業、センター管理などを行っている。保有車両数は40台(15t平ボディ車5台、15tウィング車5台、4tウィング車15台、4tバン車8台、2tバン車5台、軽貨物車2台)。地元を中心に2万8,578平方メートル(8,660坪)の倉庫や物流センターをもつ。埼玉県三郷市にも三郷営業所(運送)があり、社員は60人、パートが220人という規模である。

 主たる事業内容は、大手衣料小売チェーンの物流センター業務および店舗配送業務、菓子やカップめんその他のドライ食品を取り扱う卸業のセンター業務および業務用スーパーへの配送などである。さらに、同じ納品先である業務用スーパーに納品する発泡スチロールの皿やコップなども共同配送している。共同配送のエリアは東京、千葉、埼玉、神奈川などで、共配でも配送効率の悪い納品先には特積みを利用して配送するという契約である。とくに皿やコップなどの発泡スチロール製品の荷主では、静岡から関東、東北、北海道までをエリアとしているため、自車両や傭車ではムリな納品先は特積み事業者に委託している。

 同社では共配をしている業務用スーパーなどに、積み合わせて配送できる荷物の拡大に期待している。業務用スーパーなどの首都圏の店舗では駐車スペースが狭い店舗も少なくない。そこで混雑を緩和するため納品車両数を減らしたいという意向が強いからだ

 ハナワ物流では、企業理念でもある「社会奉仕」の一環として、6年前から市内の市立小中学校12校(小学校9校、中学校3校)のうち、毎年2校にそれぞれ10万円を寄贈している。実は市内には小学校がもう1校あるのだが、児童の減少により来春に閉校になってしまう。

 塙社長は自分の子供が小学生や中学生の時にPTA会長などをしていた。このような経験から、小中学校が一般の企業などに寄付を募ったりしない、ということが分かっていた。お祭りやその他の地元の行事では、主催者などが企業に寄付を求めたりするが、学校ではそのようなことはしていない。そこで、自社のできる範囲で地元の小中学校に現金を寄贈しようと考えた。そんなに多額の寄贈はできないが、小中学校が12校(もう1校は来春に廃校になる)あるので、毎年2校ずつ順番にそれぞれ10万円ずつを寄贈することにしたのである。6年前からなので、ちょうど今年で1巡したことになる。

 これは、社員のモチベーション・アップにもつながる。先述のように同社には約60人の社員と、約220人のパート従業員がいる。これら従業員のほとんどは市内在住である。自分の子供や、なかには孫が就学しているという人もいる。また、自分が卒業生という人もいる。自分が働いている会社から贈り物があったと、学校から帰った子供や孫から言われれば、だれでも嬉しいに違いない。また学校でも、学校だよりに写真入りで紹介してくれたりする。自分が働いている会社を知ってもらい、子供や孫に誇れるようになることは、従業員の人たちの励みにもなる。

 このようなこともあって、自分の子供や孫が通っている人や、自分が卒業した学校に社員の人が10万円を贈呈に行くようにしたのである。社長は行かないが、「私たちが安心して働けるのも、学校で先生方が子供たちを教育してくれているおかげです」といった社長メッセージを添えるようにしている。

 寄贈したお金は学校で何に使ってもかまわないし、使途を報告しなくて良い、という条件である。当初は、給食費を払えないような学童がいれば、それに使ってもかまわないと考えていたが、どの学校も形のあるものを購入しているようだ、という。

 このようなことから、今年の寄贈校で先日、「感謝をする会」を開いてくれたのである。学校の先生方からすると感謝の会を開くことも、子供たちの教育の一環と位置づけているのかもしれない。感謝をする会には社長に出席要請があったので社長が出席した。生徒の代表から感謝の言葉をもらったが、「皆さんのお父さんやお母さん、おばあさんなどの中には会社で働いている人もいる。その人たちが協力してくれるから寄贈できるので、その人たちに感謝して下さい」とあいさつしたという。

 自社のできる範囲で地元に様ざまな貢献をすることも企業の重要な役割である。この子たちの誰かが、いずれは社員になってくれるかもしれない。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>