運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第15回】 相良運輸株式会社(栃木県宇都宮市)

社員教育を重視し自社ブランドの確立をめざす

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安全、環境、品質はどの企業においても重要なテーマであり、それぞれの諸条件に応じて各社各様に取り組んでいる。相良運輸(栃木県宇都宮市、相良栄会長、相良正則社長)では、事故防止委員会、社員教育委員会で内容などを検討し、その企画に沿って全体会議で研修し、安全・環境・品質向上に取り組んでいる。

同社は1988年の設立で、現在は一般貨物自動車運送事業、第二種貨物利用運送事業(鉄道)、倉庫業、流通加工業務、一般廃棄物収集運搬、産業廃棄物収集運搬などを行っている。関連会社3社も含めて、さがらグループを構成している。相良運輸としての事業部は運輸部、環境部、倉庫部、通運部がある。現在の保有車両数は65台(運輸部45台=トレーラシャーシ含む、環境部20台)で、従業員は80名である。認証・認定関係では、ISO9001と14001、安全性優良事業所を2004年に、また、JQA機密書類処理業を2005年に取得している。

運輸部には4つの班があるが、担当業務に基づいてメンバーを構成するのではなく、様ざまな業務を担当している人たちで班を編成している。これは「無作為で班を構成することで、全社的な意識の共有化を図っている。どのような顧客の仕事でも誰もが交代してできるようにする」(相良栄会長)のが目的という。

競争が激化しつつあるなかで、長年の取引であってもいつ契約が解消されるかもしれないような状況にある、という認識が背景にある。このような良い意味での危機意識をもち、誰もがどのような仕事でもできるように備えておく。そのためには自分が直接担当している仕事以外の業務内容についても日頃から知識を得ておく必要がある、という考え方である。また、自分が担当している業務以外にも、会社全体でどのようなサービスが提供できるのかを知っていれば、日常の業務を通して得た僅かな情報からでも、受託業務の範囲を拡げられるような可能性が出てくる。

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運輸部の4つの班は8~9名で1班を構成している。班長は運行管理課長以上の役職者たちによる推薦で選任し、班長手当が支給されている。経営者、管理者からドライバーへの伝達事項などは、通常は班長を通して伝えられる。逆に、現場の声を聞いたり、現場からの要望などを吸い上げて管理者に伝えるような役割も班長は担っている。

各班には事故防止委員と社員教育委員が1名ずついるが、事故防止委員と社員教育委員は班長が選んで選任するようにしており、両委員とも1年を目安に交代するようになっている。これは「事故防止も教育も、上から一方的にではなく、委員長を中心にしてドライバーも入ってみんなで決める」(相良会長)ような運営にしているからだ。

事故防止委員会は運行管理課長を委員長に、書記として総務から1名、通運部の課長と各班の事故防止委員とで構成している。委員会は月1回の開催で、第3ないしは第4土曜日に2時間程度開く。

事故防止委員会では、事故防止のための対策などを検討する。たとえば、同社では「ヒヤリハット箱」を設置しており、ドライバーのヒヤリハット体験を委員会で検証したり、全体会議で取り上げる内容などを検討して決める。環境部も基本的には運輸部と同様の運営をしているが、就業形態が運輸部とは違うため、毎月第3金曜日に委員会を開く。

一方、社員教育委員会は運輸部、環境部が一体になって構成している。環境部の部長を委員長に、書記が1名、そして各班から選ばれた委員がメンバーだ。各班から選出される委員は、新入社員が多い。「あえて教育を受ける人たちを委員にしている」(相良会長)からである。新しく入社した人たちは、自分がとくに教育を受ける立場になるが、社員教育委員にすることで教育の内容などにも積極的に関わらせよう、という意図のようだ。そして全体会議は、運輸部と環境部の全社員が出席して、毎月第2土曜日に開催している。

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全体会議は毎回テーマを設定して開催するが、外部講師を招へいして話を聞くこともあり、礼儀などの基本から、全社的な内容や実務的な内容、一般教養など幅広く取り上げる。また、事故を起こしたドライバーに、事故の経緯や今後の対策などを発表させるようなこともしている。その発表を基に全員で検討しながら考えるのである。

1カ月間の全員のデジタコ・データを集計して、会議の資料として配布したりもする。さらに車種ごとに毎月の目標を設定し、設定目標をクリアするように取り組む。デジタコ・データなどを参考にしながら、点数は目標値をクリアしている場合でもブレーキの回数が多いなど、気づいた点を指摘しながら全員で話しあったり、車間距離や整備・点検などの体験検証なども行う。

同社ではこのような教育に力を入れて取り組み、「顧客から選んでもらえるような会社になり、『さがらブランド』の確立」(相良会長)を目指している。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>