運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第6回】 トーエイ物流株式会社(埼玉県久喜市)

「第2創業期」の中期5カ年計画を推進

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トーエイ物流(本社・埼玉県久喜市、遠藤長俊社長)では、昨年4月1日から中期5カ年計画をスタートした。

同社の設立は1963年2月で、経営計画の期間中に50周年を迎える。このため第2の創業期と位置づけて社内改革も進めている。現在の事業内容は運送業、倉庫業、梱包・流通加工業、車両運行管理請負業、物流関連作業請負業など。保有車両数は114台(10年3月末現在)で従業員数は372名(同、パートを含む)。関連会社はトーエイアドバンス、トーエイパッケージ、トーエイがある。

中期経営計画の最終年度である15年3月期の売上目標は70億円(単体)、グループでは100億円超を目指す。初年度の11年3月期には計画を1年前倒しして60億円が達成できる見通しで、経常利益も前年度を大幅に上回る予定だ(取材時点で)。増収理由は子会社との取引関係の一部変更による効果が大きかった。また、増益は倉庫の集約化効果が主な理由である。

同社は非鉄金属物流の比率が高く約40%を占めている。中期計画では非鉄物流の売上を伸ばすとともに、他の事業部門の売上をそれ以上伸ばすことで、事業部門別の売上構成も見直しを進める。そのため昨年4月には、新規開拓の先兵的な役割を担う3PL事業部を設置した。3PL事業部で開拓した仕事をセンター事業部が業務遂行するという形である。センター事業部の売上比率は現在のところ20%強で、中期計画では40%まで高めていく方針だ。

このようなことから昨年11月には東京支店を開設し、3PL事業部を東京支店に移すとともに、従来の倉庫事業部をセンター事業部に改称した。倉庫部門の利益率は低かったが、これは従来の倉庫が静的であったからだ。それに対して施設それ自体ではなく機能を売るのが動的な物流センターであり、オペレーション次第で利益を生み出すことができる。また、今後は運輸もセンターがらみにしていく、という方針である。

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中期5カ年計画では3本柱として物流品質向上、3PL事業育成、人材育成を掲げている。「これら3つはいずれも関連性があり出口としては同じだが、入口であえて分けた」(遠藤社長)という。いずれも核になるのは人材で、安全も品質も総てのベースは人材である。

同社がISO14001の認証を本社・本社営業所で取得したのは02年で、06年には全営業所でISO9001の認証を取得した。その他にも安全性優良事業所の認定なども取得しているが、これらを個別に取り組むだけではそれぞれが目的化されてしまう可能性もある。そこでベースになる人材を育成し、人材という基盤の上で目的別の取り組みを推進していくという方針である。

このような認識で新たな半世紀に向けた企業づくりをしていくのが第2の創業ということになる。このようなことから、これまで管理本部内にあった安全品質推進室を4月1日からは社長直轄にして安全や品質にいっそう力を注いでいく。

さらに4月1日からは様々な取り組みを始める。新年度の目標として「基本」を掲げたこともその一つである。基本に忠実にとしばしば口にするが、それでは基本とは何かと聞いても、即座に答えられないものである。そこで、基本に忠実にという場合の基本とは何かをあらゆる場面で問いかけて、そこで確認された基本を忠実に実行できるようにしていくのが目標という。

また、行動指針も4月1日から表現を変える。同社の行動指針は第1に安全、第2に品質、第3に利益であった。これは故小倉昌男氏から学んだものというが、しかし第1が安全、第2に品質、そして第3が利益という意味が、それだけで誰にでも理解できるかというと難しい。そこで4月からは「利益よりも安全と品質を優先する」という表現に変えた。パートの人にも分かりやすくし、何かの局面で迷うようなことがあった場合には、行動指針に基づいて判断するように社内に徹底する方針である。

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また5月には社内に物流研究会を発足する。社内教育では主任と係長を対象に定期的に開催する制度がある。これは各事業部の部長が講師になって月1回土曜日に開催するものだが、それとは別に希望者が自主的に参加するのが物流研究会である。社内公募で50歳以下の社員なら希望者はだれでも参加できる。社外の人の話を聞いたり、他社の現場を見学するなど実践を重視した勉強会だ。事務局(3人)を中心に自主企画で運営していく。自主的な研究会なので、どんなに熱心に参加しても社内評価にはつながらない。勉強を通して成長し、それが仕事に反映すれば評価は上がる。

2月の説明会には15人ほどが集まった。ところが、そのメンバーは会議などで名前が出てこないような若い人たちが多かった。そこで社長が勉強したいかと聞くと、勉強したいが機会がない、という声が出された。「これには驚くとともに嬉しかった」(遠藤社長)。第2の創業を担う人材の育成である。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>