運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第4回】 横手運送株式会社(秋田県横手市)

130年の歴史に立って経営品質の向上に挑戦

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横手運送(本社・秋田県横手市、塩田謙三社長)の創業は1881年(明治14年)で、設立が1951年(昭和26年)と、それぞれ130年、60年の歴史をもつ。

塩田陸運として創業した当時は、米や野菜などの第1次産品、火薬類など石炭坑山で使用される資材や物資など、地元関連の荷物を馬車や荷車で運んでいた。

横手駅ができた1905年(明治38年)に塩田運送店公認、さらに横黒線相野々駅ができた1920年(大正9年)には塩田運送店を創設した。そして1921年(大正10年)には黒沢駅に黒沢合同運送を設立、翌年には陸中川尻駅に川尻合同運送を設立した。

やがて1926年(大正15年)にはこれらを集約合同して横手合同運送を設立し、1944年(昭和19年)には雄平通運を設立。1945年(昭和20年)には戦時統合で日本通運と統合合併し、日通横手支店になった。そして1951年に現在の横手運送が設立されて今日に至っている。

現在は輸配送業務、倉庫業、流通加工、通関業、環境事業、自動車整備事業、人材派遣・請負、保険代理店、給油所事業など幅広く事業を展開。輸配送業務部門では食品の3温度帯輸送、小口から大口ロットまでの地域内輸送、幹線輸送、JRコンテナや海上コンテナのコンテナ輸送、学校給食配送、LPG輸送など総合的な展開をしている。

また環境事業ではスーパーやレストランなどから排出される生ごみを堆肥化して農家の肥料として供給し、できた野菜はスーパーの「ヨコウンエコフードコーナー」で販売されるフードリサイクル。発泡スチロールをインゴット化して海外に出荷する発泡スチロールリサイクルなども行っている。10年3月期の売上高は33億3600万円で、従業員は295名(グループでは468名)。本社営業所の他に7営業所、1事務所、2センターをもち、関連会社は4社で、車両数は185台(グループでは236台)、倉庫面積約1万3000㎡の規模である。

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同社の2本柱は、自動車部品の納品代行とスーパー関係の物流で、それぞれ売上の約40%を占めている。

自動車部品の納品代行を始めたのは1982年であった。長い間、地元の農産物など第1次産品を運んでいたが、農産物は季節波動があるため安定的な収入が見込める輸送分野に進出したのである。

しかし、自動車部品はゴールデンウイークや夏期休暇、年末年始などに車両の稼働率が下がるため、1990年ごろから、スーパーの物流にも進出して安定経営の基盤を確立した。

自動車部品ではパクト(PACT=Parts All Control & Transport)というセンターを核として事業を展開している。トラックが部品製造工場を回って効率的に集荷し、パクトで在庫管理や部品の組み立て、流通加工なども行い、ジャスト・イン・タイムで納品する。自動車部品関連の業務は国内だけではなく、輸出梱包や通関業務など輸出に伴う業務も行っている。

スーパー物流ではセンター業務から配送までを行う。またクロス・ドッキング方式のセンターでは、3温度帯対応で外食産業の食材なども扱っている。

このスーパー物流と関連して、1999年から開始したのがフードリサイクルだ。スーパーなどから排出される食品などの生ゴミを回収して、同社のフードリサイクル機でコンポスト(生ゴミや汚泥などを発酵してつくった有機肥料)化し、そのコンポストを契約農家が肥料にする。その肥料で収穫した野菜をスーパーが「ヨコウンエコフードコーナー」で販売するという仕組みである。

このフードリサイクルが評価され03年度には秋田県環境大賞、さらに08年度には環境大臣表彰を受けた。環境の関連では、事業ではなく社会貢献として10年に秋田県平鹿地域振興局からアダプト・プログラム(※注)の認定を受け、国道13号~県道横手大森大内線・三本柳までの道路の里親として、ゴミ収集や除草などを定期的に行っている。

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このような事業展開をしている横手運送では、社会的責任や品質向上にも積極的に取り組んでいる。

2000年にはISO9002の認証を取得(03年にISO9001認証取得)、07年には安全性優良事業所(Gマーク)の認定を本社営業所など7営業所で受けた。

環境面でもグリーン経営の認証を08年に8事業所で取得している。さらに昨年12月には、300台以下の事業者でありながら自主的に安全マネジメントの評価を受けている。

このような取り組みは自社だけではなく、08年には輸送協力会社23社と損保会社、トラックのディーラーで構成するヨコウン安全協力会を発足し、協力会社を含めて安全管理の充実強化や輸送品質の向上に努めている。

このような中で同社が現在、取り組んでいるのが日本経営品質賞の評価である。これまでの認定・認証はいわば分野別の品質といえる。今度はそれらをトータルした総合的な経営品質を評価してもらう、という方針である。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>

(※注)アダプト・プログラム=アダプトは養子の意で、道路の一定区間を養子とし、里親の会社や組織などがその区間を定期的に掃除などするもの