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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第179回】    株式会社NTSロジ(東京都東久留米市)

東京・多摩地域の物流プラットフォーム構築目指す

 時代とともに社会・経済構造は絶えず変化する。この変化にいかに対応するかが企業経営では必要だ。ある時期に成功したサービスでも、経済構造が変化しているにも関わらず「成功体験」に拘泥していると競争に取り残されてしまう。このような認識をもって約5年前から事業の方向転換を進めているのはNTSロジ(本社・東京都東久留米市、笠原史久社長)である。NTSロジは1971年の設立。当初は出版物輸送100%からのスタートだった。だが、社会の変化とともに出版物は徐々に減少しつつある。NTSロジはずっと以前から、徐々に出版物以外の取り扱いを増やしてきた。なかでも同社の大きなターニングポイントは、いまから25年ほど前に打ち出した「東京包囲網構想」だった。これは、地方から首都圏に幹線輸送された荷物を、東京を取り囲むように配置した拠点で預かり、都内や近郊に配送するというもの。同社はこの経営戦略で成功した。

 「東京包囲網構想」は出版物輸送への依存度を下げるだけでなく、「企業規模を大きくするための戦略だった」(笠原社長)という。だが、その後は人手不足やその他、25年前とは状況が大きく変化してきた。そこで同社が約5年前から新たに打ち出した経営戦略は「共同配送による積載率改善と食品廃棄物回収・肥料化などの循環型物流」(笠原社長)である。このような独自サービスの提供で「多摩地区における物流プラットフォーム」を構築するという戦略だ。実は同社のこの構想は、東京都の2020物流TDM実行協議会が「未来につながる物流」として認定した14件の中でも、さらに特に優れた取り組み5件に選ばれた。NTSロジは「共同配送による積載率改善。食品廃棄物回収・肥料化など循環型物流」で評価されたのである。それから約4年が経ち、構想が進捗しつつあるものと、やや苦戦を強いられて戦術的な再検討が求められているものがある。

 現在のNTSロジの拠点は本社の他に、浦安センター、新砂センター、品川センター、川口センター、和光センター、所沢センター、昭島センター、相模センター、流山センター(今年4月オープン)がある。また関連会社には、物流事業のキョウエイ、主に店舗事業を行っているNTSサービス(大手コンビニのフランチャイジーとして4店舗)がある。社員数は3社合わせて約470人で、保有車両数は13トン車から2トン車まで冷凍冷蔵車を主に125台である。売上げ構成は、チルド食品物流が50%、青果物流が20%、医薬品物流が10%、一般雑貨・出版物・その他が20%である。また、事業別では配送事業50%、仕分けなどの作業30%、店舗事業20%という割合だ。同社は「東京包囲網構想」で規模の拡大に成功したが、経済構造や社会環境はこの間に大きく変化している。そこで新たに進めているのが、東京多摩地区を主にした物流プラットフォームの構築なのだ。

 その第1弾が大田市場を起点にした多摩地区の共同配送である。大田市場内の青果物の仲卸業者の多くは多摩地区の飲食店向けに自家用トラックで配送している。そこでNTSロジでは、多摩エリアの飲食店への配送を共同化して効率化を図るという構想を打ち出した。共同配送や循環型物流の全体像がイメージできるようなチラシを作成して配布。そして早期に仲卸業者1社との契約ができた。「この仲卸業者は独自のプランを持っていたが、当社の構想とフィットした」(笠原社長)のだという。この仲卸業者は自社で仕分け作業などをしていた。そこでNTSロジでは、大田市場に近いJR貨物の東京貨物ターミナル駅敷地内の冷凍倉庫を借りて市場から横持ちし、荷主の取引先の都内全域の食品スーパーの店舗に配送する業務を行うようになった。だが、構想していた共同配送はなかなか難しいようだ。そこで同社ではこの間の経験も踏まえて新たなアプローチの方法を検討中である。

 第2弾の静脈物流を活用した食品廃棄物の回収、肥料化、配送等の循環型物流はどうか。これは共同配送先の多摩地域の飲食店から排出される食品廃棄物を配送車両で回収。また、大田市場から出る余った野菜や端材を同社が買い取って肥料化する。そして廃棄食品や野菜の端材で作った肥料を契約農家に販売して、契約農家で収穫された有機野菜を集荷して大田市場に運ぶ、というもの。だが、なかなか構想通りには進んでいないのが現状だ。取引している仲卸業者とも「有機野菜の販売・物流をやりたいという点では一致しているが、有機栽培で収穫できる野菜の量が少ない」(笠原社長)といった問題がある。また、廃棄食品や野菜の端材などの回収の窓口が見つからないという事情もある。そこで同社では、自社が配送しているスーパーの店舗などに働きかけて、廃棄食品などを収集した方が現実的かどうかなどを再検討し、時代にマッチした事業展開への転嫁を進めている。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>