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アルコール検知器義務化等に対する全ト協の意見

2010年11月15日(月)

社団法人全日本トラック協会は「アルコール検知器導入義務付け- 自動車運送事業の監査方針、行政処分基準等の改正に関する全ト協の意見」として、以下を公開した。

<意見原文>
―自動車運送事業の監査方針、行政処分基準等の改正に関するパブリックコメントの募集に対する意見―

1.改正についての意見・総論
貨物自動車運送事業に係る行政処分については、平成17年以降頻繁に改正・強化が図られてきており、特に、飲酒運転等悪質違反には厳罰な基準が設けられ、事故削減について着実に結果が現れてきていると思われる。

(1) これまでの基準強化による効果について十分な検証がなされていないことから、国として効果についての客観的データを示されるとともに、行政処分の強化の妥当性について合理的かつ透明性のあるものとされたい。

(2) また、事故削減、事後チェック機能の強化および輸送の安全性の向上、さらには、公正・平等な競争環境の構築に資する結果を得ているかどうか、事業の現場、行政の現場の状況について十分な調査をしながら実施すべきと考える。

(3) トラック運送事業者は事故防止に努めてきている。しかし、行政処分の強化だけでは違反防止や事故防止には十分ではない。運送事業者が無理な運行をせざるを得ない運送業界を取り巻く背後要因を除去することの必要性に十分留意いただきたい。


2.具体的項目に対する意見
(1)改正概要2.行政処分基準の(1)について

(1)アルコール検知器の備え義務違反の初違反60日車について
初違反60日車という処分量定は他の項目と比較(*)しても非常に重い。また、当該事項は新設規定であり、備え付けの状況等を見極める激変緩和措置を講ずることや、当面は口頭警告、或いは警告処分とするような弾力的な運用をお願いしたい。
(*)現在の「点呼の実施違反」の基準日車数:未実施率50%以上で初違反20日車、再違反60日車)

(2)アルコール検知器の常時有効保持義務違反の初違反20日車について
アルコール検知器には技術基準がないこと、現在の機器は精度・安定性、故障等の耐久性の面で疑問があり、機器の有効性をどのように判断するのか明確でない。このような状況にあるものについて初違反20日車にも及ぶ行政処分を行うことは問題であり、初違反は口頭警告にとどめる等弾力的な運用をお願いしたい。

(3)アルコール検知器の備え義務違反は、安全規則第7条第4項「営業所ごとに備え」に対するものであり、この解釈はおよび運用は、「営業所に設置され、営業所に備え置きまたは営業所に属する事業用自動車に設置されているものをいう。」とされている。その処分基準が一律に初違反60日車、再違反180日車とされているが、営業所に属する事業用自動車への設置については、事業者によって設置義務車両数が大幅に異なることが推測される。
「1両に対しての義務違反」、「100両に対して1両のみの義務違反」等のケースが想定される。従って、点呼の実施違反の処分と同様に設置率の導入等を検討すべきと考える。

(2)改正概要2.行政処分基準の(3)について
「行政処分等の公表範囲として、文書による警告を受けた一般貨物自動車運送事業者を追加することについて」

(1) 文書警告は監査項目が数多くある中、比較的軽微なものであり、ある面では事業者が法令遵守に一生懸命取り組んでいる結果でもある。そのように法令を遵守しようと頑張っている事業者を公表するようなことは避けていただきたい。

(2)「文書による警告」の公表期間は、「行政処分」を受けた事業者の公表期間(現状3年間)と差別化(例えば1年間)する等の配慮をお願いしたい。

「自動車等の使用停止処分において、違反行為に使用された車両を停止する等、停止対象の車両指定等の基準を明確にすることについて」
(3)違反行為に使用された車両を停止する等の「等」は、どのような車両の停止を考えているのか具体的に明示されたい。
トラック事業者は、近年の経営環境の悪化により予備車両を持てる状況にはなく、多くの減車が進んでいる。また、事業用トラックは特種用途トラック等荷主の個別輸送ニーズに対応した車両で食料品、医療品等、社会機能維持物資や経済産業活動を支える運送を行っている。これらトラックを使用停止の対象とした場合、他の荷台形状のトラックでは対応できないため、当該事業者にとっては事業停止と同じ処分を受けることに等しく、当該荷主に対しても輸送責務を放棄せざるを得ないこととなる。また、車両数が多い事業者は対応が可能としても、保有車両が少ない事業所や保冷車、タンク車等特殊な車両での輸送の場合、経済活動にも影響が出ることから、例外規定処分方法を示して頂きたい。

3.その他
(1) 現在、Gマーク取得営業所に認められているIT点呼実施基準については、備え付 け管理パソコン間についてのみ、その実施が認められているところであるが、管理パソコン間に限定せず、携帯電話やIT機器を活用した点呼も認めて欲しい。

(理由)Gマーク取得事業所は、重大事故を惹起することなく法令遵守に努めてきてい る事業所であり、そのインセンティブとして与えられている現行のIT点呼基準 は、運行管理者等及び運転者双方が点呼実施営業所、点呼被実施営業所に出退勤しなければならず、通常の対面点呼とほぼ同等の労力が必要で業務改善等には至っていない。

(2)現在、63,000社にも及ぶトラック運送事業の現状は、ますます競争関係が激化しており、適正運賃の収受もままならない状況があって、安全確保のためのコスト確保に大きな影を落としている。このような行き過ぎた規制緩和の状況を改善していくことを最優先すべきで、現在、トラック産業の将来ビジョンに係るワーキンググループが検討している参入規制の見直しや標準運賃等の設定等、環境整備が急務である。